写真雑学68  あの日、あの時、あの笑顔    渡辺澄晴   

写真雑学68  あの日、あの時、あの笑顔     渡辺澄晴

群馬県・桐生市在留の写真家の斎藤利江さんから、新年の挨拶と共に2冊の本が送られてきた。一冊は小学館発行の月間人気漫画(西願良平画)「三丁目の夕日」の最新号で、その付録として斎藤利江さんが撮影した160枚に分けて掲載した「三丁目の街角スナップ」昭和30年代の春夏秋冬という写真集だった。その内容は「三丁目の夕日」の各卷に写真と文章を提供したもので、今回は過去10年間の掲載分から選んで一冊にまとめたもの。彼女は中学、高校時代に趣味として写真を撮り、カメラ雑誌やコンテストに入選、10代ころまでプロカメラマンを目指していたが、高校を卒業する寸前に父の猛反対に会い夢を断念した。彼女の父は綱広といい私の写真の先輩である。

60歳の誕生日に見つかった父からのプレゼント

斎藤さんは、父が亡くなって10数年後、遺品の整理をしていると「利江のネガ」と書かれたクッキーの缶を発見。写真家になることに猛反対していた父に処分されたと諦めていたネガはカビが生えぬように大切に保管されていたのである。何よりも代えがたい父、綱広さんからの60歳誕生日の、最高のプレゼントだった。桐生で彼女と会った時、その写真とネガを見せてくれた。チャンバラごっこ、祭り、運動会、紙芝居などなど子供たちの遊ぶ四季折々の、昭和の世界を克明に捉えたものだった。中でも花嫁さんを見つめる子供たちは、その昔カメラ雑誌(カメラ毎日一等賞)で見たもので、強烈に私の脳裏に焼き付いていていた作品だった。

写真弘社の柳沢社長を紹介し、半年後に桐生の公民館であの日、あの時、あの笑顔の写真展が開催された。このことを地元紙やNHKが取り上げると、当時の花嫁さんも孫を連れてに来たり、チャンバラの子供たちも夫婦で見に来たりで、会期中公民館は大賑わいだった。以後東京のニコンサロン(当時京橋)で開いた写真展では朝夕のゴールデンタイムにNHKが紹介、その影響でニコンサロンは始まって以来の盛況になり、銀座4丁目の交番や近くのカメラ店に「ニコンサロンはどこ」という会場の問い合わせが殺到した。

今回は漫画、三丁目の夕日の付録だが、2月下旬にはA5160ページの斎藤利江写真集が小学館より発行される。定価本体1800円+税・・・ちょっと宣伝し過ぎたが、写真を見れば納得する。しかし「これが彼女の写した写真?」と、疑う人もでてくると思うが、このことは当時モデルになった花嫁さんやチャンバラごっこ子供たちが、30数年ぶりで再開した「斎藤利江」を囲んで、当時のことを思い出して懇親していることでも証明できる。

カメラも、現代のように押せば写るというようなカメラではない。絞り?は、シャッタースピード?は、フイルムの感度は?と、露出を考え撮影した撮影基本知識なければ撮れない時代に写しもの。写された写真はそうした難度を乗り越えたフットワークのきいた実にうまいスナップ写真である。

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by yumehaitatu | 2018-02-03 12:00 | 写真雑学 | Comments(0)

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