やぶにらみ論法57 「 おとこと、おんな」 堀田義夫   

  過日「女性たちの写真展」という展覧会を見ました。そのときこの世の中は「おとことおんな」しかいない、それなのに殊更「おんな」だからと謳うところが謙虚にも受け取れ、また、傲慢にも感じられ、「おんな」であることを異常に意識しているところが狡くもあり、賢くもあるように思えました。なぜなら、「男性たちの写真展」なんて聞いたこともないでしょう。でもわたしはこの「女性たち……」という響きにはかなり深い意味を感じているのです。
 話はちょっと逸れますが、2004年のアテネのオリンピックに、日本からは女性の選手は128人が参加。男性選手は102名でした。そしてメダルの獲得数は女性が13個。男性は5個でした。女性は入賞率10%。男性は5%。明らかに女性の方が成績はよかったのです。
 今年、ハマ展の写真部に応募して入選した120名の作家の割合は、男90名。女は30名でした。そのうちで入賞者は、男9名。女は6名。入選割合からすれば、男は女に対して3倍の入賞者を数えて当然なのに、結果は明らかに女性優位だったのです。
 唐突に、オリンピックやハマ展といった例を引き合いに出しましたが、わたしは日頃から写真であるとか、絵画といった感性を伴う世界は女性の性行に適しているように思うのです。その結果が前述の女性優位という結果を示しているのではないでしょうか。
 写真の場合、男性は知覚的・概念的・技術力に依存し、理論武装をした作品を好んでつくるように思います。言い方を変えますと、カメラの機能を使いこなすことに腐心して、バランスとか構図にとらわれすぎ、かえって物事の本質が見えなくなってしまっていることが多いように思うのです。
 その結果、ときを重ね、経験を積むに従って見せ方上手で巧いだけの写真家になっていくような気がするのです。
 そこへ行くと、女性の場合はろくにカメラもつかえないで、「どう撮ったらいいの!」と叫んでいながら、結構素晴らしい作品を発表します。カメラの使い方も解らないまま、写真を撮っていることで、逆に自由に撮れて感覚的な作品が写せるのではないでしょうか。また、女性は好き嫌いがはっきりしているから、自分が面白いと思ったことに素直に反応するからでしょう。
 当研究会でも、女性優位の傾向に皆さんはお気づきでしょうか。大木伊都子さん、桑田喜久子さん、本山栄子さん、林美江子さんその他、多くの女性作家の仕事に魅力を感じていませんか?
 わたしは、「面白くなけりゃアートじゃない!」と思っています。感心するような巧いだけの作品をつくってナンバーワンを狙うより、女性のように、自由で気ままな発想で作画を楽しみオンリーワンを目指す方がよっぽど楽しいと思うのですがどうでしょう。
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1年前、休稿となりました堀田先生の「やぶにらみ論法」、今号より渡辺先生の「写真雑学」と隔月で掲載させていただくこととなりました。 ご愛読をよろしくお願いいたします。          編集委員一同

by yumehaitatu | 2010-01-10 13:02 | やぶにらみ | Comments(0)

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