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写真雑学55 ネイチャーフォト 渡辺澄晴   

写真雑学55 ネイチャーフォト

小さな庭の仲間たち

東京世田谷にあった上野毛の社宅から、今の保土ヶ谷に移って40数年になる。小さいけれど庭もあった。そこへ草花を植えた。間もなく新築祝いにと、群馬で椿を栽培している著名な人から蕾のついた椿の苗木が5本と、見事な皐月の盆栽が贈られてきた。大きな庭と勘違いしたのか、分に似合わぬ贈りものだった。「そうだここに咲く花やその花の蜜を求めて飛んでくる昆虫たちを撮ってみよう。」しばらくまとまった写真を撮っていない。庭を見て急にモチベーションがわいてきた。1970年の春だった。

それから1年半後、新宿のプラザホテル内のニコンサロンで「小さな庭の仲間たち」というテーマの写真展を開いた。内容は庭に咲く花。その花の蜜を求めて飛んでくる昆虫の生態などだった。このことがあって複数のカメラ雑誌社から花や昆虫の撮り方、交換レンズの使い方などの、原稿の依頼が絶え間なくあり、その原稿に添える作品作り。接写の実践指導。各地の講演をなど、多忙な日々が続いた。

ネイチャーフォトテクニック

自然食品、森林浴、バードウォッチング、アウトドアライフ・・・我々の身の回りには、こうした自然指向を奨励する言葉があふれている。各地で宅地造成が行われ、また、都市化が進められている昨今だけに、失ってしまった自然を求める気持ちもより高まってくるのだろう。しかし、ほんのちょっと注意してみれば、我々の身近にはまだまだ沢山の自然が残っている。

四季折々の風景や、美しい草花、愉快な昆虫たちの世界を写真に撮りたいと思っても、かっては露出を決定することからして困難だった。しかし今日では、メカニズムの飛躍的な進歩によって解決され、誰でも簡単・確実に素晴らしい自然界のひとこまを記録することができるようになった。露出、ピント等々撮影操作はすべてオート化され、また各種交換レンズの発達により、かって体験したことのない新たな視覚、いわば、もうひとつの自然をもとらえることができるように

なった。

ネイチャーフォトの素晴らしさは決して自然を破壊しないということだ。草花を採るわけでもなく、昆虫を捕るわけでもなく、ひたすら写真を撮るだけだから。ただ、「我々人間も他の動物や植物と同じ自然界の一員にすぎない」ということだけは忘れてはならない。彼らの生活を侵害することなく、そっと見せてもらうという謙虚な姿勢で撮影にのぞむことが大切だ。そうすれば彼らのほうから、感動的な自然界のワンシーンを必ずや提供してくれるはずだ。

この文章は1983年に発刊したハウツー本、「ネイチャーフォト・テクニック」の、『はじめに』という前書きである。

今年も折り返し点を回り8月になった。夕方になると、庭の木の根の周辺からセミの幼虫が地中から出てくる。しさしぶりにセミの生まれるシーンを、腰をすえて撮ってみたいと思う。 

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by yumehaitatu | 2015-08-01 17:00 | 写真雑学 | Comments(0)