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写真雑学41「懐旧」渡辺澄晴   

懐旧 
棒の先のカメラ
 今年に入り2020年のオリンピック・パラリンピックの東京招致に向けられPRが活発になってきた。
テレビでは頻繁に1964年の回顧記録、東京オリンピックの入場式と聖火台での点火の模様がよく放映されている。以前にも書いているが、その聖火台に点火する聖火ランナーの真後ろからニコンモータードライブをつけた3本の竿がふらふら動いて見える。
 通信社のAP,UPIとタイムライフ社のカメラマンが、シカゴのボクシング会場でヒントを得て、竿の先にカメラをつけた遠隔操縦の仕掛けである。その仕掛けを日本シリーズの、優勝監督の胴上げの撮影にも使用した。
川上の胴上げ
 今年1月元横綱の大鵬さんが亡くなった。そんなことから「巨人・大鵬・玉子焼き」というフレーズが再び聞こえてきた。日本の高度成長真っただ中の1960年代、大鵬は無敵の全盛期を迎えていた。
 プロ野球では長嶋、王を擁した巨人が1965年、南海ホークスと巨人の日本一をかけた日本シリーズが行われた。巨人が3勝1敗あと1勝で優勝という前日の午後、スポーツニッポン社の写真部長のK氏が日本橋の本社に私を尋ねてきた。K氏とはなぜか気が合いお互いよく行き来していた。「明日の後楽園での第5戦を巨人に賭けてみたい。勝てば川上監督の胴上げがある。その胴上げをオリンピックの聖火台を撮ったような仕掛けを使って撮ってみたいので協力して欲しい」という趣旨だった。
  「それなら魚眼レンズで撮ってみよう」とK氏に提案した。全画面180度の測量用として開発した直径24ミリの円で写る特殊レンズで、うまくいけば必ず話題を呼ぶはずと思った、K氏も乗り気になった。
そしてそのレンズを貸与した。
 しかし大きな心配があった。当日巨人がこの試合に勝たなければ、撮影の仕掛けが他社にばれてしまうことだった。が、勝利の神は巨人に向いた。
 試合は2対2のまま9回となり、その9回裏に巨人が1得点のさよなら勝ちとなったのである。めでたく川上監督の胴上げとなった。
 もっとめでたいことは川上監督の胴上げを真上から俯瞰して撮ったユニークな写真が、この年1965年「スポーツ写真大賞」に選ばれたことだった。
 翌年は各社が真似をしてカメラをつけた数本の竿が胴上げ場面に登場した。当然ながら、長い竿を使って球場の中で撮影するのは危険!ということになり以後は竿の持ち込みは禁止になった。
<ニューヨーク 1963年>
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by yumehaitatu | 2013-03-24 15:37 | 写真雑学 | Comments(0)

堀田義夫の「やぶにらみ論法」76 リバースコーチを求めて   

【リバースコーチを求めて】堀田義夫
 古い友人に「60才以上になったらリバースコーチを作れ!」といわれたことがある。耳慣れない言葉なのでその意味を聞いてみた。
 【リバースコーチとは、自分を教え導いてくれる年上の人ではなく、若くても未熟でも新しい刺激を与えてくれる人、自分の知らない世界を教えてくれる人のことをリバースコーチと呼ぶ】のだ、と教えてくれた。
 なーんだ、そんなことならすでに実行しているわい! とそのときは軽く聞き流していたが、最近になって、自分の考えがいかに軽く、表層的だったかを思い知らされた。
 安倍晋三総理のおじいちゃんの元総理大臣の岸信介さんは、「年を取ったら風邪ひくな、転ぶな、義理を欠け」と名言を残している。体調と相談しながら、いただいた展覧会の案内状から、誠意や意欲のくみ取れない展覧会には義理を欠くことにしている。
 また、案内状の受け止め方もある。出品者の顔ぶれで、どの程度のレベルの展覧会かを自分勝手に推測してしまうことだ。また、仲間の評判にも耳を傾けて決断する。
 出品作家にとっては、「昨日よりは今日!」、「前回よりは今回!」といった意気込み(中にはそうでないものもあるが…)があるのだろうから、こちらの姿勢にも、過去のイメージで、鑑賞しないうちから、勝手な思い込みは失敬な話ではある。
 ところで、体調を崩す前まで、20数年間、一緒に月例会をひらいて勉強した人たちの展覧会に伺った。出品作の中に、昨年秋に一緒に行った奈良の撮影会の作品があった。撮影技術、レタッチとも非常にすぐれていて、その作品を見て、自分の力量の乏しさ、表現力の拙さ惨めさを実感した。
 この惨めさは「若いもんなんかに負けるかい!」といった思い上がった気持ちが私にあったからだと反省している。素直に自分の拙さを認め、若くて新鮮な刺激を与えてくれた作家とその作品をリバースコーチとして頑張るしかないのである。
 もう一つ印象に残った展覧会は、写歴5年くらいの経験しか持たない作家だが、発表のたびに注目してきた。
 この作家は、東南アジアを舞台に作画活動しているが、その取材量の広さ、知識の豊かさに圧倒さる。またモチーフの選択、コンセプトの明快さなど、人生の源資(知的経験の豊かさ)か私にとってのリバースコーチであることに気づかされた。
 写真の世界では、写歴の長さを自慢する輩が多い。写歴が長くても作品が発するメッセージが読み取れない自称・先生が跋扈し、リバースコーチの存在は認識したがらない世界だと感じる。
 私は日頃「共育」ということを標榜し、「若いから」「経験が浅いから」、といったことを本当に意識しないで、リバースコーチを求めていたか、いま改めて心の底から思っていたかを反省している。
 これからは、真剣にリバースコーチを求めて、人生を前進しながら終わりたいと思った。
<どぶ板通り>
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by yumehaitatu | 2013-03-09 21:58 | やぶにらみ | Comments(0)