堀田義夫のやぶにらみ論法54   

「コレクション画像充実の勧め」
 当研究会の最大のイベントである【夢の配達人展】を来月に控えて、会員諸氏は作品作りに研鑽を重ねていることだろう。私自身も難行苦行の日々である。そんなある日、96才、現役の映画監督である新藤兼人さんの話を聞いた。
 「私の作品はパターンが決まっていないから、こんどはどんな作品なのだろうか?」という期待感を持って頂ける。と先取の気概を語り、そして「評価が低くても観客の入る映画は、格好悪くて、ボクには作れない」と芸術家としての格好よさを語っていた。
 これと同じような話しで、洋画家の梅原龍三郎さんは「私は百人の群盲のために絵を描こうとしているのではない。私の仕事を理解して共感される人がいれば、たとえそれが数人であってもいい」と語っている。ここにも芸術家・梅原龍三郎さんの美学が読み取れる。
 こうした孤高の大芸術家ではないが、私が最初に師事した絵の先生は「写生やスケッチは、技術の習得には必要不可欠なものだが、それを作品とはいわない」といわれ、技術習得と習得した技術によって生まれる作品を区別されていた。
 写真をメディアにした表現者にも同じ事は言える。「いい被写体に出会って、シャッターを切り、ハイ!それまでよ~…」といったものは「写真ではあっても、作品とは言えない。写した写真に想いを込めてこそ作品といえる」と思っている。
 たとえば映画の場合、監督の心に描かれた想いが影像をパーツとして組み合わされ、作品化が図られるのです。私たち写真をメディアに表現活動(フォトアート)するとき、未知のイメージに遭遇したり、イメージを増幅させる手段としてコレクション画像を充実させることは、一つの方法です。
そこで私の個人的な手法を紹介すると、撮影の機会がある毎に、 「ハッ!と思ったら撮る」撮ったものがその状態では鑑賞にならないようなものでも良いのです。大事なことは「ハッ!」と思うことです。
この「ハッ!」は具体的な言葉に言い表すことは難しいのですが、これをコレクション画像としてファイルに保存するのです。なにも感じない被写体ではなく、「ハッ!」としたんだから……
 私のコレクション画像には、「海の表情」「空の表情」「魚貝類」「植物」「昆虫」「鳥類」「動物」「人物」「人形」「背景・パターン」「都市の景観」等々と層別されてファイルが作られています。
 そうしたファイルは、さらに細分化されています。たとえば「空の表情」には〈梅雨空〉〈荒天の空〉〈晴天の空〉〈明け方の空〉〈暮れゆく空〉といったようになっています。
 こうして保存されたコレクション画像をパーツとしていろいろ組み合わせて、イメージを拡幅する手段にしています。
 私たちひとり一人が持っているイメージは貧困なものですが、このようにコレクション画像の組み合わせを考えると、いままでは経験したこともない、あるいは潜在的な意識との新たな出会いが期待できるのです。是非、知的財産でもあるコレクション画像を充実させようではありませんか。
「天空からのメッセージ」
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by yumehaitatu | 2008-10-04 21:24 | やぶにらみ | Comments(0)

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