堀田義夫の「やぶにらみ論法」(45)   

~自分に負けるな~
同年配の友人たちの中に食道ガンを征服した人、大腸ガンと闘っている人、肺ガンを患って入院中の人などがいる。加齢だから……当たり前と片づけてしまえばそれまでだが、本人にとってはなかなか納得できない。齢を重ねたからといって、生への執着が薄れるかといえば、むしろ逆で、元気な頃より、さらに未練が増すような気がする。
 そういう私も胃ガンのため胃袋を全摘出して3年が経った。そして、最近悟ったことがある。それは、『自分に負けるな!』ということだ。
 先日も仲間たちと忘年会を兼ねて、箱根へ撮影に行った。集合が午前9時。このような時には私は、目を覚ましてからは水も食物も一切口にしない。仮にそうしたものを口にしたら最後、ひどい腹痛に悩まされるからだ。
 ところが、他にもスケジュールの関係で、どうしても午前中に出かけなければならないことだってある。そうした際の対処法が、前出の断食・断水法なのである。
 だが、今回の撮影旅行のような時は、一泊して翌朝は仲間と朝食をすませ、撮影を始めても平気なのだ。不思議なことだが、医者から貰っている薬より、仲間と一緒にいることの方がよっぽど私の体調を快適にさせてくれるのである。家にいる時と比べれば信じられない現象だが本当のことで、仲間が私に元気を与えてくれているのである。
 家にいる時は、朝食をすますと10時過ぎまで仮眠してしまい容易に書斎に上がれない。このことは自分もそうだが、家族も私の甘えを許してくれるからだ。すなわち「自分に負けている」ことを自分も周囲も許しているのである。
ところが仲間はそうではない。 本稿の「14号・あなたがいるから頑張れる」にも書いたが、仲間はみんなライバルでもある。怠惰な私の気持ちを奮い起こさせる好敵手なのだ。そうした環境には甘えの構造は許されない。だから、仲間には緊張感を持って接するから、体調がよいのだということを実感している。
 そうしたことから考えると、ライバルに負けるのは仕方がない。しかし『自分に負けたらダメだ』。もし頑張った結果、ライバルに負けたとしてもその口惜しさが自分自身の財産になるんだと考えるようになった。
 よく『私なんかセンスもなければ才能もない』と卑下する人に出会うが、そんな人はいない。きっとその人だけが持っている素晴らしい才能に本人が気づいていないだけなのである。作風というのは、作家ひとり一人が違って当然だろう。写真だって写しているうちに巧くなる。大事なことは『自分に負けない!』ということだと近頃思うようになった。
<光彩 筆者作品>
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by yumehaitatu | 2008-01-06 14:27 | やぶにらみ | Comments(0)

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