「やぶにらみ論法」98     大人気の美学  堀田義夫   

 「やぶにらみ論法」98     大人気の美学  堀田義夫 2016/10/14

 平成28年10月11日~16日、当研究会の会員、大嶋丁未子・高橋洋子・堀井裕子さんが昨年に引き続き「昔姫・3人展」を開催した。私は、連日会場に詰めて多くのことを学んだ。

その第1は、大胆な会場の設定

 貸しギャラリーだから、1メートルでも展示壁面を広く使いたいと思うのが普通だが、その壁面の2割に当たる部分の壁面を撤去した大胆さな会場構成だ。エントランスホールから会場の全景が目に飛び込んでくる。賃貸料の2割を、会場構成費に消費されているのだが、男社会では、必ず「もったいない」と言って反対される。そんな大胆なことをやってのけた度胸の良さは見事、昔は「男は度胸、女は愛嬌」といっていたが、いまは時代が変わって異性文化には、前例にとらわれない度胸の良さがあると思った。

第2として、展覧会の原点を問う姿勢

 もともと17世紀フランスで広まった「サロン」という言葉は、名士たちの応接間、あるいは社交場として美術団体の定期展、音楽家の演奏会などが併催された。そうした意味では、作品の制作者と観客が共に楽しい雰囲気に浸れる空間でなければならない筈だが、日本では展覧会場で大声で話し合ったり笑ったりすることは御法度なのだ。国民性なのかも知れない。

 ところが、「昔姫・3人展」の会場はまさにサロン化していて、作品を見ながら作者と観客との会話が弾み、文明・文化論まで飛び出しその賑やかなこと、長い人になると1時間くらい帰らない人がいる。

 それは作家たちの人柄や気遣いもあるのだろうが、会場の雰囲気が柔らかく他の展覧会と比べ大きく違う。その違いを観察すると、作家たちの目線の低さにあるように思えた。

 例えば、鑑賞者の知りたいことについて専門的技術論やメディア論はもちろんだが、どこで撮ったの?どうしてこんなところを知っていたの?私の故郷の近くだけど全く知らなかった、今度行ってみたい。

 私も行ってみたいけど、いまではとても行けない!、珍しいとこを見せて貰ってとても嬉しい、こんな所で生活している人は可哀想、などと観客と作家が目線を合わせながら対話の広がりを楽しんでいた。

 俺たち、私たちのやっていることを見せてやるんだといった高所からの目線を感じない。素晴らしい雰囲気の漂う展覧会だと思った。

 尊敬される作家はそれなりの振る舞いが要求される。それは“大人気”である。「大人気」とは自分を引くことだ。他人(観客)にとって良いことのために、自分を少々犠牲にしても、さりげなく振る舞う姿勢が大切なのである。一般的には売れっ子作家になると真っ先に失うのがこの「大人気」である。自己PR・承認欲が優先してしまう。そうしたことでも作家たちの心配りには遺漏がなかったように思う。

第3は作家たちへの羨望

 靑森から来た、奈良県から、静岡県、千葉県、埼玉県からといったように遠くから駆けつけた観客とお目にかかり懇談する機会を得た。これは出品作家の人徳のなせる業だ。ただただ驚くばかりです。

 実は昨年も私はその人たちにお目にかかっている。ということは毎年足を運んでくれているのだ。写真を通した厚いお付き合いをしている出品作家の人徳には敬服する、私たちが自慢の仲間たちである。
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by yumehaitatu | 2016-11-05 17:01 | やぶにらみ | Comments(0)

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