写真雑学54 カメラ屋からのメッセージ   渡辺澄晴   

写真雑学54 カメラ屋からのメッセージ   渡辺澄晴
老いの一徹

「カメラ屋からのメッセージというハウツー本を書きたいが・・」と、横浜市内のカメラ店の社長T氏から突然電話で相談をうけた。平成6年の夏、まだフイルム全盛期の頃である。「店頭で顧客の相手をしているうちにどうしても書かなければ」という気持ちになったのだという。出版は自費でもという熱心なもので、電話口で話す彼の出版構想は止め処なく大きく膨らんでいた。一冊のハウツーものをまとめるにはかなりの労力と、調査など、もろもろのファクターをクリアしなければならない。自分の経験からハウツー本はそんな簡単なものではない。半ば見縊りと驚きを感じながら、彼の熱っぽい相談にも「大変ですよ」「慎重に」と繰り返し、出版を思い止まるような返事をしてその日の電話を終えた。

正直なところ出版はあきらめたのではないかと思っていた。ところが電話を受けてから約1年が過ぎた頃、ひさしぶりにT氏から電話がきた。「以前お話しした件、やっと書き上げました。原稿を送るから目を通して欲しい・・。」とのことだった。老いの一徹というか、根性というか、彼はついに書いてしまったのである。間もなく原稿が送られてきた。岡山へ行く新幹線の車中でその原稿をみた。目次を見ると、カメラのこと、レンズのこと、フイルム・照明・構図の知識と多岐にわたる写真全体の項目が書き述べられていた。

だがハウツー記事の難しさはイラストと作例写真にある。このような類の本はなるべく文字を少なくイラストと写真作例を多く取り入れないと読者には理解されない。それは大変な作業である。「どうするつもりだ!」と心配した。ところがそんな心配は無用だった。次に届いた原稿は、そのイラストと作例写真を多く入れたものだった。〈カメラやのおやじからのメッセージ〉のサブタイトルに〈本格派を目指すための知識とテクニック〉というメインタイトル通り、本格派カメラマンへのハウツー本である。【あとがきの稿の終わり当たってには、「活字離れの時代に発行しても読む人はいないだろうという忠告を聞く度に『読んでくださる人は必ずいる』と自分に言い聞かせながら、やっと脱稿の日を向かえることができました。」・・・A4判155ページの初心者にも分かりやすい「カメラの知識とテクニック」が見事に出来上がったのである。

写真の基本は昔も今も同じ

とにかくカメラは変わってしまった。若い時からカメラに親しんできた中高年の方にはそんな印象を強く感じることだろう。フイルムを使わず、すべての機能はマイクロコンピューターによって制御されている。フイルム全盛期に書いた本だから、今頃こんな本は通用しないだろうと思うだろう。しかし、家族の写真や旅行の記録写真だけでは物足りず、作品といわれる写真を写してみたいとなるとカメラの機能の働きを、より効果的に使いこなさなければならない。つまり、ハイテクカメラの知識を深め、撮影にどう生かすか、ということになる。

ISO感度・絞り値・シャッタースピードと露出のこと被写界深度・パンフォーカス・ライティング・ストロボ・発色・望遠レンズ・広角レンズ・ズームレンズ等々。基本的なことは今も昔も変わらない。「写真の基本を知らなくてうまい写真が撮れるわけがない。」カメラ屋のおやじT氏は今もこの本を教科書にして教室を開いている
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by yumehaitatu | 2015-06-06 17:00 | 写真雑学

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