堀田義夫の「やぶにらみ論法」76 リバースコーチを求めて   

【リバースコーチを求めて】堀田義夫
 古い友人に「60才以上になったらリバースコーチを作れ!」といわれたことがある。耳慣れない言葉なのでその意味を聞いてみた。
 【リバースコーチとは、自分を教え導いてくれる年上の人ではなく、若くても未熟でも新しい刺激を与えてくれる人、自分の知らない世界を教えてくれる人のことをリバースコーチと呼ぶ】のだ、と教えてくれた。
 なーんだ、そんなことならすでに実行しているわい! とそのときは軽く聞き流していたが、最近になって、自分の考えがいかに軽く、表層的だったかを思い知らされた。
 安倍晋三総理のおじいちゃんの元総理大臣の岸信介さんは、「年を取ったら風邪ひくな、転ぶな、義理を欠け」と名言を残している。体調と相談しながら、いただいた展覧会の案内状から、誠意や意欲のくみ取れない展覧会には義理を欠くことにしている。
 また、案内状の受け止め方もある。出品者の顔ぶれで、どの程度のレベルの展覧会かを自分勝手に推測してしまうことだ。また、仲間の評判にも耳を傾けて決断する。
 出品作家にとっては、「昨日よりは今日!」、「前回よりは今回!」といった意気込み(中にはそうでないものもあるが…)があるのだろうから、こちらの姿勢にも、過去のイメージで、鑑賞しないうちから、勝手な思い込みは失敬な話ではある。
 ところで、体調を崩す前まで、20数年間、一緒に月例会をひらいて勉強した人たちの展覧会に伺った。出品作の中に、昨年秋に一緒に行った奈良の撮影会の作品があった。撮影技術、レタッチとも非常にすぐれていて、その作品を見て、自分の力量の乏しさ、表現力の拙さ惨めさを実感した。
 この惨めさは「若いもんなんかに負けるかい!」といった思い上がった気持ちが私にあったからだと反省している。素直に自分の拙さを認め、若くて新鮮な刺激を与えてくれた作家とその作品をリバースコーチとして頑張るしかないのである。
 もう一つ印象に残った展覧会は、写歴5年くらいの経験しか持たない作家だが、発表のたびに注目してきた。
 この作家は、東南アジアを舞台に作画活動しているが、その取材量の広さ、知識の豊かさに圧倒さる。またモチーフの選択、コンセプトの明快さなど、人生の源資(知的経験の豊かさ)か私にとってのリバースコーチであることに気づかされた。
 写真の世界では、写歴の長さを自慢する輩が多い。写歴が長くても作品が発するメッセージが読み取れない自称・先生が跋扈し、リバースコーチの存在は認識したがらない世界だと感じる。
 私は日頃「共育」ということを標榜し、「若いから」「経験が浅いから」、といったことを本当に意識しないで、リバースコーチを求めていたか、いま改めて心の底から思っていたかを反省している。
 これからは、真剣にリバースコーチを求めて、人生を前進しながら終わりたいと思った。
<どぶ板通り>
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by yumehaitatu | 2013-03-09 21:58 | やぶにらみ | Comments(0)

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