写真雑学36【フィルムに別れ】渡辺澄晴   

もったいない
「捨てるのはもったいない」「時間がもったいない」と、よく口にします。物の値を十分に生かしきれずに、無駄になっている状態や、そのような状態にしてしまう行為を戒める意味で使用されてるこの「もったいない」は、2005年環境分野で初のノーベル賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイさんが来日の際に感銘をうけた日本語でした。マータイさんはこの美しい日本語を環境を守る世界共通語「MOTTAINAI」として広めることを提唱し、テレビでもお馴染みになっていました。

捨てるか使うか17本のフイルム
デジタルカメラを使い出してから私のカメラの棚には、電池を抜いた数台のフイルムカメラが棚晒しになっています。その中の一台だけに電池とフイルムが挿入されていて、何を写したのか、カウンターは21を指していました。写したものが気になったので、残り十数枚は庭の椿を撮って、久しぶり現像に出しました。フイルム全盛期には現像時間は数時間だったのに、この日は翌日の仕上がりでした。冷蔵庫の中には、まだ17本の35ミリのカラーフイルムが残っていました。いまさら使っても現像に時間と費用がかかり、「費用と時間がもったいない」デジタルと比べたら作品の仕上がりも歴然として劣ります。
このフイルムを使ってくれる方がいたので、使わないもったいないは救われました。記念に2本だけ残しました。

炭鉱内の写真は撮ったのか?
前回の雑学35で北海道幌内炭鉱の進入記、「一日炭鉱夫」の記事を書きました。炭鉱夫に扮した記念写真を見た人から「若いときはハンサムだったんですね!」とお世辞を言われました。その返す刀で「写真ではカメラを下げていましたが、実際に坑内で撮影したのですか?」と聞かれました。
先に結論を言うと撮影は失敗でした。坑内はフラッシュは使えない。照明はヘルメットの懐中電灯だけ、フイルムは当時の高感度SSS(ISO200)を400に増感現像して50ミリF1.4開放で、シャッタータイムをいろいろ変えて挑んでみたが、結果は露出不足とカメラブレで、満足に撮れているものは一枚も無しでした。当時コダックからTri-X ISO 400の高感度フイルムが発売されていたが一般には入手困難の時代でした。仮にこのTri-Xを増感現像したとしても、せいぜいISO1600程度。ISO3200や6400の高感度が当たり前に使える今のデジタルカメラなら、撮影は成功したろうと思います。
「心斎橋」
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by yumehaitatu | 2012-06-03 00:14 | 写真雑学 | Comments(0)

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