写真雑学「モータードライブ」 渡辺澄晴   

カメラのロボット化
ニコンに勤務中、東京オリンピックを2年後に控えた1962年の9月、ニューヨークに赴任しました。目的はニコンFモータードライブの修理と使用状況の調査でした。モータードライブカメラとは、1秒間に3駒の撮影ができる当時としては画期的な自動フィルム巻上げモーター付カメラのことで、東京オリンピックのために開発した言わばカメラのロボット化の走りといえます。その頃の日本の報道関係者は、まだ大きなアメリカ製のスピグラ(スピードグラフィック)が主力でしたが、そのアメリカやヨーロッパでは既にこのモータードライブカメラが大量に使われていました。
最初の大仕事
ニューヨークに着いて間もなく、シカゴのコミスキーパーク球場に出張しました。「世界ヘビー級チャンピオンのパターソンと同級1位のリストンとのタイトルマッチを特設リングの上から撮りたい」というUPI通信社の依頼によるものでした。
リングの上にカメラを固定してしまうと試合中はフィルムの入れ替えはできない。そのために長さ30センチもある特殊の250枚撮りモータードライブを5台使いました。それらをリングサイドからカメラマンが1人で操作しようという工事です。大きな試合なので警戒も厳重。工事が終わるまで常に監視されていました。「試合中にカメラが落ちないだろうか・・」そんな心配をしながら入念に取り付けました。
 試合はあっけなく、挑戦者のリストンがチャンピオンのパターソンを1ラウンドでノックアウト。
日の新聞紙上にパターソンのダウンの瞬間や勝ち誇ったリストンの姿がリングの上からのユニークなアングルで掲載されていました。
そしてその日の午後、UPI通信社から感謝状が届きました。ニューヨークに渡って最初の大きな仕事でした。
あれから40年!
カメラはすべてがオート化。つまり撮影者の命令に忠実に従うロボットになりました。フィルムの入れ替えの手間もなく、メモリーカード1枚で500枚でも1000枚でも。大判カメラの領域だった遠くの新緑や紅葉、集合写真も。
アナログカメラの時代にはフィルムの感度と被写体の明るさに合わせて、シャッタースピードと絞値を設定、ピントを合わせ、シャッターボタンを押し、そして現像・・プリントという工程を経ていました。「これが写真の醍醐味!」と、昔を懐かしむノスタルジアになるのは私も同じです。だが、それはそれとして、未だに「デジタルなんて・・」と、フイルムカメラにこだわる人がいます、・・・「時代の波に乗れない人」と、気の毒に思えてなりません。
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by yumehaitatu | 2010-02-13 20:48 | 写真雑学 | Comments(0)

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