絞とシャッタ 渡辺澄晴   

<ニューヨーク>
絞とシャッタ  渡辺澄晴_f0018492_2245975.jpg

作品データ
ニコンFニッコール105mm、F2.5、絞り8、シャッター1/250、TRI-X D-76 フジブロ3号 D-72。これは40数年前にアサヒカメラに掲載したニューヨークで撮った1枚です。

 コンテストやカメラ雑誌に作品を提出するときは、撮影時のカメラやレンズ名を記し、絞り値とシャッタースピード、そしてフイルムの種類と、そのフイルムの現像液名、印画紙の種類と印画紙現像液名まで書いたものです。
 これらのデータは、作品になるまでのプロセスを見る側に参考として伝えることが目的でした。私も他人のデータを大いに参考にしていました。つまりアナログカメラ時代の写真カルテでした。

 レンズの明るさの系列は、1を基準として1.4を公比とする、1.4・2・2.8・4・5.6・8・11・16・22・・・となることは前号でも述べました。シャッタースピードも・・8秒・4秒・2秒・1秒・1/2秒・1/4秒・1/8秒・1/15秒・1/30秒・1/60秒・1/125秒・1/250秒・1/500秒・・・1/8000秒と倍々になります。
 これら型にはまった数値は、被写体を露出計で測光して、絞りとシャッターを撮影意図に合わせて組み合わせる、いわゆるマニュアル方式のためにありました。
 今のカメラは全て電子カメラです。常用のレンズはズームレンズです。被写体の画角をズーミングで決め、露出もマニュアルモード以外は電子制御です。だから「この写真は何ミリのレンズで撮りましらか?絞りは?シャッターは?」と聞かれても、正確に答えることはできなくなりました。
 例えば、ニコンD80 ・AF ニッコール24-120mm、F8、シャッターオートISO感度400。これは被写界深度を重んじる絞り優先モ-ドです
 ところが、このデータではシャッタースピードがわかりません。また、流し撮りや早いものを撮るシャッター優先のモードでは、シャッタースピードは分かりますが、絞値は電子制御されるため絞値を知ることはできません。そして使用レンズがズームでは何mmのところで写したのかも分かりません。
 極めつきは、露出はカメラにすべてをお任せのプログラムモードです。このモードは私もスナップ写真によく利用します。初めてカメラを使う人には失敗なく撮影できますのでお勧めのモードです。
 ただし正確な撮影データはわかりません。しかし、経験を重ねることで、プログラムモードなら絞値とシャッター。絞優先モードならシャッタースピード。シャッター優先なら絞値。レンズも広角系か望遠系か?は、ある程度の想像がつきます。
 写真展など見て歩きながら、この写真はフイルムカメラなのかデジタルカメラなのか?レンズは望遠か広角か?絞値は?シャッターは?・・など想像しながら作品を鑑賞するのも楽しいものです。次号はそのことに触れたいと思います。

by yumehaitatu | 2009-03-15 22:37 | 写真雑学 | Comments(0)

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